.L world2020/05/19

焼とりの八兵衛がハワイに上陸!そこには数々の奇跡があった

歩み

焼とりの八兵衛がハワイに上陸!そこには数々の奇跡があった

福岡の地で生まれ育った焼とりの八兵衛がついに太平洋を越えてハワイへ!

社長の八島さんが目指したのは、地元の人たちに愛される本物のYAKITORI。異国の地で店を開き、ロコに受け入れられるまでには、数々の奇跡があった。


□博多の焼とり、ハワイへはばたく

「焼とりの八兵衛」と言えば、今や福岡を代表する焼とり店のひとつと言っても過言ではないだろう。糸島市にある前原本店をはじめ、福岡を拠点に東京や海外など10店舗以上が存在。「焼とりの八兵衛」で修業し独立した‶卒業生″を加えれば、その数は数えきれないほど。そんな人気店を一代で築き上げ、牽引するのが八島且典さんだ。

実家が3代続く精肉店だったこともあり、根っからの商売人気質。若いころは朝9時から夜中の4時まで働く日もあったという。22歳で焼とり屋を始めて35年。どれだけ会社が成長しても焼とり屋の店主という姿勢は変わらない。時間が許す限り、自ら焼台の前に立ち真摯に串と向き合っている。


そんな「焼とりの八兵衛」が2017年にオープンさせたのが、ハワイにあるチャイナタウン店だが、いくつもの奇跡がなければ実現しなかったという。

最初の奇跡は、のちに共同経営者となるロバート・ヤマザキさんに出会ったこと。シカゴで育ち、ニューヨークで働いていた日系4世のロバートさんは、たびたび仕事で日本を訪れていた。そして2001年八島さんと運命の出会いを果たすことになる。福岡を訪れたロバートさんは、評判の店と聞いて「焼とりの八兵衛」天神店へ。味のある雰囲気、活気ある店内、鼻をくすぐる炭と焼とりの香り、そして何よりも美味しさに感動したロバートさん。その日が初対面にも関わらず「この店がハワイにあったら、ハワイの人たちは絶対喜ぶ!ぜひ一緒にお店を開こう」と声を掛け、八島さんも一言「OK」と返し、そこからすべては始まったのだった。

 

□二人の運命を変えた奇跡の鶏との出会い

ハワイ進出を目指した二人は、忙しい仕事の合間を縫って、たびたびハワイへ赴き開業への模索を続ける。しかし、物件選びに難航したり、リーマンショックがあったりと月日はどんどん流れていく。その後、ロバートさんは福岡で出会った日本人女性と婚約。結婚式の場に選んだのは、もちろんハワイだった。招待された八島さんはハワイでロバートさんたちの姿を見つめながら「二人のためにもハワイでお店を開いて、絶対に幸せになってもらいたい」と強く決意する。

そんな八島さんの気持ちを知ったロバートさんは、順風満帆だったそれまでの生活をすべて捨て、実家があるハワイへ帰る。念願のハワイ店開業のため、奔走した。ハワイで焼きとり店を開くにあたって絶対に欠かせないのが鶏だが、八島さんが納得できる鶏にはなかなか出会うことができなかったという。

物件探しや現地の人たちが好む味を追求するため、評価のレストランを食べ歩く日々が続いた時のこと。「ハワイでは地産地消のレストランがブームになっていて、人気のシェフたちは地元の生産者と交流しながら信頼関係を築いていることに気付いたんです」と、八島さん。そこで、以前から気になっていたものの、仕入れルートを持っていなかったため、諦めていた鶏を育てている養鶏家ジュリアス・ルドビコさんをとあるシェフに紹介してもらうことに。

農場に赴き交渉するも、生産数に限りがあるからと始めは相手にしてもらえなかったという。しかし、八島さんとロバートさんは一年以上の時間を掛けて説得。最後は八島さんが目の前で焼とりを焼き、初めて口にした本物の焼とりのおいしさに衝動を受けたジュリアスさんは「うちの鶏をみつけてくれてありがとう!」と、ついに取引を約束してくれた。

この出会いが大きな一歩となりハワイ店開業は前進。その他の生産者たちと地道に交渉しながら、カウアイ島の希少な塩、地元で採れた新鮮な野菜など、次々に取引を成立させていき、8割以上をハワイ産の食材で賄うことに成功したという。

 

□ロコに愛される秘密!

福岡が誇る焼とり文化を世界へ
八兵衛がハワイに渡ってHACHIBEIに!


□紆余曲折の15年を経て遂にハワイで勝負!

ハワイでは物件探しも難航したが、ようやく納得できる物件が見つかった。その知らせを聞いた八島さんがハワイを訪れ、契約と帰国を翌日に控えていた時、ロバートさんに一軒の物件情報が寄せられる。すでに契約を決意していた八島さんは乗り気ではなかったものの、ロバートさんの熱意に根負けして見に行くことに。

訪れたのは、チャイナタウンにある1902年に建築されたレンガ造りの古い建物。チャイナタウンといえばオアフ島でもっと古くから栄えた下町のような場所。日本人をあちらこちらで見かけるワイキキからほど近いものの、夜の一人歩きは控えるように喚起されるほどローカルなエリアで、観光客はほとんど足を踏み入れないところ。

決して立地の良い場所とは言えないが、八島さんはここで焼とりを焼けたら最高に幸せだな」と一目惚れして契約したという。その時、八島さんは日本の職人技で、ハワイの食材を使って地元の人たち・ロコに喜んでもらう焼とり屋にしようと決意したという。2017年1月、ついに二人の夢が実現したチャイナタウンの店がオープン。

 

「もしロバートに出会わなければ、もしあの鳥に出会わなければ、もしあの物件に出会わなければ実現できなかった。すべては奇跡の連続でした」

と八島さんはかったってくれた。

 

 

数々の奇跡から生まれた焼とりの兵八衛 ハワイチャイナタウン店。
今、地産地消やオーガニックのブームが来ているハワイは、食文化が大きく変わろうとしているという。
ハワイでのこだわりの食材を探し、調達している八島さんは、そのシェフたちのグループの中の一員という強いい自負があるという。

その想いから、ハワイの鶏をハワイの塩で焼いて、ハワイの人たちに焼き鳥を広めている。
そして、日本で働く若いスタッフたちにもその磯を受け継ぎ、日本各地や海外など福岡の焼とりを広めてほしいと願っているのだという。

 

焼きとりの兵八衛 ハワイチャイナタウン店

 

 

2018年10月発行Vol.4掲載記事より

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No:66

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